エーデルリッド・メガジュルでビレイしてみた感想【ロープ繰り出しが、し辛い】

 

こんにちは、トミーです。

クライミング歴は12年くらい。
アルパインがやりたくてクライミングを始めましたが、スポーツクライミングも結構好きになりました。

 

さて、今回は、以前から気になっていたATC(確保器具)である「エーデルリッドのメガジュル」を購入し、実際に使ってみたのでその感想です。

使用シーンは、とりあえず、ジムでのスポーツクライミング(リードのビレイ)です。

 

結論、ロープ繰り出しがし辛かったです。

以下、具体的な体験談になります。




エーデルリッド・メガジュルでビレイしてみた感想

リードのビレイの際、「ロープが繰り出し辛い」と思いました。

ロープ繰り出しが、し辛いです

特に、リードクライマーがクリップをする際に、ロープを手繰るじゃないですか。

このときって、ビレイヤーはその動きを読んでロープを多めに繰り出そうとするんですが、これが上手くいかない。

何故なら、通常のATCだと、「下側(右手・利き腕)の手を前に出して繰り出すロープを多めに準備しておき、その後に上側(左手・非利き腕)の手でロープを一気に出す」ということが可能であるのに、

メガジュルだと、それができない。

リードクライマーがクリップするときは、右手をこのポジションから前に突き出して、繰り出すロープを準備する

リードクライマーがクリップするときは、右手をこのポジションから前に突き出して、繰り出すロープを準備する

上記の動きをしようとすると、瞬く間にHMS型カラビナがメガジュルの方向に吸い込まれ、ロックがかかり、ロープが繰り出せなくなってしまうのです。

 

ちなみにメガジュルでロックがかかる仕組みは、カラビナが「メガジュルのえぐれた部分」に引き込まれて挟まることでロープも流れなくなる、というものです。下記写真の状態です。

カラビナが、メガジュルのえぐれた部分に食い込んでいる。この状態だとロープは流れない

カラビナが、メガジュルのえぐれた部分に食い込んでいる。この状態だとロープは流れない

 

ロックが掛からないようにするには、メガジュルにある操作レバー(黄緑色の部分)を親指で握り、角度を調整してやれば、ロープは流れます。(そもそも、そういう仕様です)

黄緑色のレバーを親指で握って前に引っ張ると、ロープはスムーズに流れる

黄緑色のレバーを親指で握って前に引っ張ると、ロープはスムーズに流れる

しかし、それだと右手(利き手)が塞がってしまうので、左手だけで繰り出す動作をせざるを得なくなり、結局は繰り出す長さが短くなってしまうのです。

 

リードクライマーがクリップの際に一瞬でたぐるロープは、思いの外長かったりします(1m以上?)。

それをビレイヤーが一瞬で繰り出すには、片手だけだと確保器具の摩擦が働くためにロープの流れが悪くなり、割と厳しい…。

 

もちろん、手繰る動きに合わせて自分の位置を移動できる状況であれば、下地の安定したジムであればそれほど問題にはならないと思います。

 

しかし、下地が不安定だったりすることの多い外岩では、ビレイヤーはその場で自在に動けない場合も多いわけなので、ロープの繰り出しが思うようにいかないことは多いと思います。

 

外岩で、難易度の高いルートで本気トライをしているリードクライマーにとって、ビレイヤーのロープの繰り出しが遅いことは、例えば下記のような不具合が起きてしまいます。

  • 手繰る途中でロープがスムーズに出てこず、素早いクリップができない
  • 素早いクリップができないということは、その瞬間において”手繰り落ち”のリスクが発生しやすくなる

上記の意味で、リードクライマーにとって致命的な結果を招くことになりかねません。

そういうケースでは、ロープ繰り出しに難があるメガジュルは、あえての使用はオススメできないと思いました。

上下逆の場合は、さらに繰り出し辛い

それでは、メガジュルのセットを上下逆にした場合はどうでしょうか?

上下逆(黄緑色のレバーを上側)にセットしてみたら・・・

上下逆(黄緑色のレバーを上側)にセットしてみたら・・・

やはり、ロープが次第にメガジュルに吸い込まれてゆき、ロック状態となり流れなくなってしまいます。

そして、黄緑色の操作レバーが使えなくなるので、ロック解除も極めてしづらくなります。

なので、やはりオススメはできません。

慣れによってコツを掴めば、繰り出し辛い問題も解決?

メガジュルは、手を離しても自動でロックがかかる構造なので、逆に下側の手を過度に握り続ける必要はありません。

なので、思い切って下側の手を、上側の手と合わせる位置に前に突き出した状態にして、メガジュルをロックさせない位置に保つようにできれば、スムーズな繰り出しは可能かもしれません。

上下のロープを前のほうに出しておくように意識し、メガジュルとカラビナが離れた状態を維持する

上下のロープを前のほうに出しておくように意識し、メガジュルとカラビナが離れた状態を維持する

しかし、そこはまだ検証が必要ですね。

【補足】→検証しました

黄緑色のレバーから離した状態で、両手を前方にキープしながらロープ繰り出しを行った場合、どうしてもすぐにメガジュルと環付カラビナがくっついてしまい、ロックがかかってしまいます。よって、「クライマーのクリップに合わせて、瞬時にロープの繰り出しを行うこと」はメガジュルでは至難です。

 

メガジュルのメリットは、懸垂下降時にあり

懸垂下降のときに、確保器の下側の手は原則として絶対に離してはいけません。

離したら、その瞬間に滑落してしまいますからね。

 

そしてどうしても離さざるを得ない場合には、ロープに結び目等を作って仮固定をする必要があります。

または、別途フリクションコードを使用してバックアップを取る必要があります。

【関連記事】クライミングにおけるエイト環の役割とは【ATCとの違いを解説】

 

クレムハイストによる、懸垂下降時のバックアップ。通常はこうしたものを準備しておくことが多い

クレムハイストによる、懸垂下降時のバックアップ。通常はこうしたものを準備しておくことが多い

 

しかし、メガジュルを使えば、そういう作業が必要なくなります。手を離しても、ロープが勝手にロックするために、墜落する心配がないからです。

この点において、懸垂下降時における致命的なリスクはかなり軽減されます。作業点におけるミスの誘発の確率も極めて低くなります。

これは、頻繁に懸垂下降をする状況があるアルパインクライミングやマルチピッチでは勿論のこと、城ヶ崎など一部のフリーの岩場でも、非常に重宝するだろうと思います。

 

実は、この懸垂下降のシーンにおいて、肌感覚でどの程度メリットを実際に享受できるのかを知りたくて、メガジュルを買ったというのがあります。

また、現場で使用した際に、追って加筆したいと思います。

まとめ

以下、メガジュルの初回の使用感について、まとめます。

  • リードクライミングのビレイ時、ロープの繰り出しがし辛い
  • ジムであれば下地が良いので、ビレイの位置を移動しながら調節することで、ロープの繰り出しにくさはある程度カバーできる
  • 外岩の場合では下地が悪いことが多く、ビレイの位置を移動したりできない場合に、ロープの繰り出しにくさは解決できない
  • 上下逆にセットしたら、もっとロープの繰り出しはやりにくくなる
  • 上下の手を前に合わせて突き出す形でフォームをとれば、繰り出しがやりやすくなるかもしれない

こんな感じです。

なお、懸垂下降においては、メリットが多々ありそうなので、これについてはまたそのうち加筆したいと思います。

セカンドビレイでの使用感も、気になるところですね。

おわり。