【11/16 Day20】ポカラ滞在

お別れの時

朝6時前起床。

部屋の窓からは夜明け直後のアンナプルナ連峰が浮かび上がっている。。

感動の光景。

夜明け前、アンナプルナ連峰が浮かび上がってきた

夜明け前、アンナプルナ連峰が浮かび上がってきた

しばらく見とれていると、ドアをノックする音が。

「グッモーニン、サー」

ダワの声だ。

すぐにドアを開ける。

ダワは私の登山トレッキング証明書を手に持って立っていた。

「我々はいまからもうカトマンズへ帰るけど、最後にこれを渡そうと思ってきた」

そういって、私に証明書を手渡してきた。

「ダワ、サンキュー。今までありがとう。下のロビーまで見送るよ」

そういって、一階ロビーへ降りる。

そこには既に準備済みのゴンブーがいた。

最後に軽く挨拶をして、ふたりに封に包んだチップを手渡した。

「ダワ、ゴンブー。18日間一緒に旅してくれて本当にありがとう。ふたりには道中に色々助けてもらえて、感謝です。そしてとても楽しかった。これは私からのほんの気持ちばかりのチップです。少ないかもだけど、受け取ってください。気をつけてカトマンズまで帰ってね」

ふたりはこれまでに見せたことがないような、改まった謙虚な態度でチップを受け取ってくれた。

ホテル玄関を出て、外の通りまで見送る。

ダワ、ゴンブーとの別れの瞬間。またぜひ一緒に旅したい。

ダワ、ゴンブーとの別れの瞬間。またぜひ一緒に旅したい。

彼らは一度こちらを振り向いて、手を振ってくれた。

そしてそのまま歩いてレイクサイドの通りのほうへ消えていった。私は彼らの姿が見えなくなるまで見送った。

これで完璧に私は1人となった。

少し寂しいけど、私もどのみち明日にはカトマンズに戻るのだ。

部屋に戻って、屋上へ景色を眺めにいく。

完全に夜が明けたアンナプルナ連峰が美しい。

ずっと昔から、ポカラからのこの景色を見たかった。

それが今、現実になっていることの嬉しさ。

寂しさは既に忘れて、絶景に没頭した。

朝食〜フェワ湖へ散歩

ホテルの朝食は久々のバイキング形式。

7時の開始直後に食事。

ホテルのバイキングでの食事は基本外さない。味やコスパは良好。

その後、この日は「パラグライダー」を体験する予定だ。

ネパールヒマラヤを眺めながらの滑空体験。

人生でもこれ以上ないくらいの貴重な体験である。

これは元々事前に予定に組み込まれていて、私の中ではプライオリティの高いイベント。

空を飛ぶ」という体験も、私の中では幼少期からの憧れや夢のひとつである。

タンデム・パラグライディングは、過去に数回体験したことはあったが、

ここヒマラヤの麓において、絶景の中での滑空体験というのが個人的には外せなかった。

そして、パラグライダー体験ともなると、後発発展途上国においてどのように業者と合流し、体験に至れるのかが懸案事項ではあったが、

その辺は、スマン氏とホテルオーナーの計らいによって実に滞りなく見事に何の問題もなく、パラグライダー体験へと滑り込むことができた。

ホテルのロビー前にて、パラグライダー体験ツアー事務所のクルーが10時に私を車でピックアップしてくれるということだった。

朝食後に少し時間があったので、フェワ湖まで軽く散策。

パラグライダー体験ツアーに合流

その後9時45分にホテル1階ロビーにて待機。

10時すぎ。

待っている間、本当に迎えがくるのか少し不安だったが、予定時間を5分ほどすぎた頃、パラグライダー体験ツアーの車がホテルにやってきた。

大きなハイエースから、無愛想なドライバーが出てきて手招きされる。

助手席に座ると移動開始。

他に誰も乗っておらず、会話はない。

まず車はポカラ市街地はずれにある事務所へ。

そこで一旦車を降ろされ、事務所で受付。

受付は元気ハツラツな感じの若いお姉さんで、「予約のtomyさんですね!」と感じよく応対してくれた。

「準備が整い次第出発するので、しばらくここで待っててね!」と言われ、椅子に座って待つ。

反対側の壁際の椅子には、アジア系の女性二人組が座っていて、女性スタッフが何やら応対している。

結構待たされた。20分くらい?

何をやってるんだろうか?ちょっと不安になってきた頃、声をかけられて、表のハイエースに乗る。

女性二人組も同じタイミングで立ち上がり、車に乗り込んだので、同じツアーなのかと理解した。

そしてハイエースには奥に白人男性がひとり乗っていた。どこかから迎えられてきたのだろう。

そして、車の中で待機してると、テンション高そうなイケイケ感丸出しの屈強そうな男性クルー達が4〜5人乗り込んできた。

そして車は出発する。

しばらくしてワイルドな感じのリーダーがハスキーボイスでアナウンス。

「やあみんな!今日は参加してくれてありがとう!どこから来たの?(一人一人に話しかける)そうかい素晴らしいね!じゃあこの紙に署名してください」

参加用紙に各々署名して、回収。

「OK!今日は絶好のパラグライダー日和だよ。みんなパラグライダーは初めてかい?初めてでも安心してね!私たちが完全にサポートするからさ!全く問題なしだよ〜!」

とにかく明るい笑

パラグライダーのメッカとなっているサランコットの丘は、標高約1600m。ポカラの街から700mくらい、山道をグネグネと登ってゆく。

結構な急登で、朝の街がどんどん遥か眼下に展開してゆく。

参加者は、私含めて4名。

女性二人組は、台湾人。

白人男性は、イギリス人。

そして日本人の私。

タンデムフライトなので、一人一人にクルーが着いて、各々が2人1組になって飛ぶ。

道中車内で、英語でパラグライダー体験についての具体的なブリーフィングがあったけど、なんとなくしか理解できなかった。

ただ、リーダーは、なんと少し日本語も話せた。

私をみて「日本人デスカ?私も日本に少し居たことアリマス」と話しかけてくれた。

ちょっと驚いたw

しかしそう考えると、少し日本語を話せるくらいの人は、割合的に結構多いのかもしれない。

タトパニでひとり、そしてポカラではホテルオーナーと、パラグライダーのクルーリーダー。

偶然とはいえ、この数日間で、日本語を話せる人と3人も出会っている。

ちなみに名前は「ビカール」と言っていた。

ビカールというと、「神々の山嶺」に登場する主役のクライマー羽生丈二が、ネパールで「ビカール・サン」という名前で呼ばれていたことを思い出した。

サランコットの丘に着いた。

いざ空へ

パラグライダーで賑わう斜面は、南側(ヒマラヤと反対側)を向いていた。

日当たりは良好なのだが、肝心のヒマラヤが見えない。。

これは想定外だった。

しかし、眼下にフェワ湖を眺めながら、テイクオフをするのはワクワクする。

そしてちょっと不安。。

うまく離陸できるのだろうか?

タンデムでは、客がクルーの前側になるため、離陸する際は自分で助走をつけなくてはならない。

助走失敗すると、離陸できない。

そこが緊張である。

台湾女性の二人組も、各々分かれて各担当クルーと2人1組になり、各々で説明を受けながら、各々のタイミングでテイクオフする。

我々一行以外にも、実に多くのパラグライダー客がいる。

パラグライダー会社は他にもあるため、タンデムフライトの人が多くいたが、勿論単独の人もいる。100人近くは居たであろう。

助走する場所は広く明るく開けた草付になっているが、斜度は結構な急斜面で、30度くらいありそう。

我々が装備を装着し、軽い練習をしている間に、周りは次々と空へと飛び立ってゆく。

私は、比較的早めにテイクオフの順番がまわってきた。

多分、4名の中では一番手か二番手である。

クルーに促されて、斜面を無我夢中でひた走ると、フワッと地面から離れていった。

恐怖と興奮で、思わず絶叫。

どんどん足元が空中高くへと離れてゆき、気づけば山の周りを風に乗って舞い、高度は高まってゆき、視界の景色がぐるぐると回り始めていた。

方位や高さの舵取りは、もちろんクルーの役割。

私はただひたすら、興奮のあまり、言葉にならない声が出続けていた。。

パラグライダーは実は初体験ではない。

しかし、20年ぶりくらいで、海外では初めてだった。

眼下の山腹に点在する家々が、まるでミニチュアの模型のようだ。

しかし、結構距離感は近くて、そこに暮らす人々がこちらを見上げて、手を振ってくれる人もいる。

こちらもそれに応じる。

鳥達は毎日、こんな景色を眺めて当たり前に空を飛んでいるのだろう。

上昇気流に乗って空高く舞い上がると、下界の喧騒は次第に消えていった。

静寂の滑空。

周辺には、無数のパラグライダーが空中を舞っている。

圧倒的なまでの、平和な光景。

サランコットの丘に連なる山地の向こうに、白いアンナプルナ連峰の上端が、チラ見えしている。

背後についてグライダーを司ってくれているビカールが、突然日本の歌(なんだっけ?)を歌い出した。

訪日した際に覚えたんだろう。

そういやダワも「月が〜、出た出た〜」と歌ってたが、日本の歌はネパール人にもウケるようだ笑

「どうだい?ネパールの空は」

「最高フォ〜!!」

結構長時間、滑空していた。

徐々に徐々に、高度を下げてゆく。

高度が下がるとき、少し気持ち悪くなった。。

飛行機がエアポケットに入る時も気持ち悪くなるが、あの感じ。空飛んでても酔うんやなと。。

ジオラマのような複雑な山の地形を感じながら、左前方にフェワ湖のきらめきを眺めながら、これ以上ない飛行体験を、想像以上に長い時間にわたり堪能することができた。

地面に近づいてくると、あの場所に降り立つのか…と思われる広場があった。

周辺のパラグライダーは、みんなあの広場に着陸している。

それにしても、風を読み、滑空のコントロールを行いながら、見事に狙った場所へと着陸してゆく技術はすごいなーと思う。

人間は本来空を飛ぶ生き物ではないのに、滑空をコントロールできる感覚をも備えているんだなと。

地面が届きそうな高さに近づいてくると緊張感が高まる。果たしてうまく、着地できるだろうか?

そして地面ギリギリのところまで来ると、足を全力でバタつかせる笑

どうにか無事着地!

フライト時間は、およそ30分くらいだったが、体感的にはもっと長く感じた。

ハーネスと機材を外し、すぐにフリータイムとなる。

フライト後〜ポカラ市街地へ

ビカールは、他の知り合いたちに絡んだりしてどこかへ行ってしまった。

このパラグライダー着地エリアの広場には多くの人で賑わいを見せ、フライト後一息つく人々が出店で軽食を摂ったりして憩っている。

私も椰子の実ジュースを注文。

ヤシの実ジュース(300ルピー)

ヤシの実ジュース(300ルピー)

ぬるくてあんまり美味しくなかったw

我々一行のうち、私が到着一番手だった。

台湾の女性のうちの1人がしばらくして着地してきた。

そこから時間をあけて、女性のもう1人。

最後にイギリス人が着地。

多分30分近く、ここで待っていた感じ。

全員が揃うと、ビカールがやってきて音頭をとり、みんなで帰りのハイエースに乗り込む。

昼下がりのフェワ湖の湖畔沿いの道路を通り、ポカラの街へ。

この時に隣に座ったイギリス人と少しだけ喋った。

彼は一人旅だそうで、マナスルサーキットをトレッキングしてきたらしい。

私はアンナプルナサーキットを辿り、チュルーウエストに登ったという話をした。

6000mの登山は凄いね!と驚いていた。

ポカラの街に着くと、まずパラグライダー会社の事務所の前で台湾女性ふたりが降り、

次にレイクサイドのメインストリートを途中まで走ったところでイギリス人が降り、

最後は私ひとりになり、

宿泊ホテルの前まで送ってくれて、解散となった。

そこからは完全にフリータイムだ。

遠くマナスル山群のピーク29とヒマルチュリもくっきりと見えている

遠くマナスル山群のピーク29とヒマルチュリも鮮明に見えている

ホテルの部屋からは、アンナプルナ連峰がよく見えている。

東の方にはピーク29とヒマルチュリもくっきりと。

まずはお昼を食べに街へ出る。

レイクサイドのメインストリートに日本食ラーメン屋があり、思わずそこに吸い込まれた。

店員は現地人で、客も含めて日本人はいない。

まずはラッシー。冷えててうまい

まずはラッシー。冷えててうまい

シンプルな豚骨ラーメン。確か450ルピーほど

シンプルな豚骨ラーメン。確か450ルピーほど

ラーメンの味はシンプルな豚骨ラーメンではあったが、変なアレンジもなく、普通に美味かった。

その後、フェワ湖のほとりまで行く。

物凄い人の数。混雑している。

渡し船乗り場があり、湖の向こう岸まで渡れる。

渡った先にはハイキングルートがあり、丘の頂上には日本山妙法寺という観光スポットがある。

非常に行きたかったが、実はこの時点で時刻は15時前。

日没時間は大体18時ごろなので、ゆっくりハイキングをするには時間が足りない。

少し悩んだあげく、諦めた。

結局この時間からだと、ハイキング関連は近場ですらも何もできない。

憧憬の地との出会い

アンナプルナの山々がなるべくきれいに眺められるスポットを探して、フェワ湖沿いに散歩する。

東南方向へ進むと、バスンダラ公園と駒ヶ根友好公園というふたつの大きな公園がある。

この辺りまで来ると、少しずつアンナプルナの山々の景色が開けてきた。

しかし、昔に旅行パンフレットでみたポカラからのアンナプルナ連峰の写真は、もっとよく見えている場所から撮ったもののはず。

あれの場所は一体どこなのか?

さらに東南方向へと歩いてゆき、ダムサイドという場所まできた。

ここはしがなく地味で何にもない小さな公園だった。

ふらっと公園内に入る。

すると、、

ああ。多分ここだ。

ポカラをとりまくアンナプルナ連峰の全てが見えている。

まず左奥にはダウラギリⅠ峰。

ダウラギリⅠ峰

ダウラギリⅠ峰

そして、

アンナプルナサウス、アンナプルナⅠ峰

アンナプルナサウス(南峰)、アンナプルナⅠ峰

アンナプルナサウス(南峰)、アンナプルナⅠ峰

マチャプチャレ、アンナプルナⅢ峰

マチャプチャレ、アンナプルナⅢ峰

マチャプチャレ、アンナプルナⅢ峰

アンナプルナⅡ峰、アンナプルナⅣ峰、ラムジュンヒマール

アンナプルナⅡ峰、アンナプルナⅣ峰、ラムジュンヒマール

アンナプルナⅡ峰、アンナプルナⅣ峰、ラムジュンヒマール

7000〜8000m級の巨大な峰々が、湖の向こうの空に天を突くように連続して連なっている。

このダムサイドにある小さな公園。

ここからみたアンナプルナ連峰の写真が、私の登山人生を決定的にしたといっても過言ではない。

ここからの景色の写真に一目惚れして、私の登山人生が始まった

ここからの景色の写真に一目惚れして、私の登山人生が始まった

高校1年生の時。

地元の駅前にある旅行社の前に、ネパールヒマラヤのパンフレットが置いてあり、

たまたま手に取って見て、そこにあったヒマラヤの写真に衝撃をうけた。

いつか将来、ヒマラヤの高峰をこの目で見てみたい。

心底そう思った。

それが、まさにここから見た景色だったのだ。

30年の時を経て、

何度も夢にまで見たこの景色を、私は実際にこの目で、眺めることが叶ったことになる。

実に感慨深かった。

周囲には、やはりここからのアンナプルナ連峰を眺めるために、観光客がにわかに集まっており、三脚を立てて撮影している人もいる。

しかし特に観光スポットというわけでもない。

街の中心からは2kmくらい離れていて、歩いてくるにしても結構遠い。

1人でネパール入りをし、初めてのヒマラヤ登山をひそかに終えて、

そして最後にご褒美となる夢の景色を今この目で眺めることができている。

30年はさすがに焦らしすぎたかな。

もうちょっと、早く叶えることが出来たのでは。

そんなことも思ったし、これまでの迷い多き不器用な生き方を少し後悔もした。

でも、途中様々な寄り道をしてしまったものの、ここに到達することができて良かったと思う。

30年もひとつの願望をずっと持ち続けられたことも、我ながら中々の執着心だった。

このポカラ郊外の小さな公園で、これまでひた走ってきた山人生で、一つの区切りがついた気がした。

勿論、これだけじゃないし、他にも叶えたいことは複数、心の中に持ち続けている。

次はそれらに向けて、進んでいくだけ。

刻一刻とヒマラヤは表情を変えてゆき、夕方になる。

空はうっすら赤みを帯び、それまでかかっていた雲は次第にとれてゆき、山の輪郭がくっきりと浮かび上がってくる。

最後に燃え上がるように白き高峰がオレンジ色に輝いた後、

再び白くなってゆき、

空はピンク色になり、

そして夜の帳が降り始める。

街に灯りが灯る頃、

私はまたホテルへと歩いて戻っていった。

これでアンナプルナは見納めとなる。

もっと長く滞在したかったが、

また次の機会を得て必ずこの地を再訪したい。

結局、楽天トラベルのサイトはエラーのままで、

帰路航空券の日程変更は叶わぬままに終わってしまった。

 豪華な1人打ち上げとフェワ湖畔で夕涼み

一旦ホテルに戻ってから、

夕食を食べるためにまたレイクサイドへ。

ポカラに学生時代に行ったことがあるという仕事関係の知人から、事前におススメしてもらっていたカフェ「BUSY BEE CAFE」に行く。

炒飯、ナンカレー、サラダなど

大量に注文し、お腹いっぱいに。

その後ビールを買って、飲みながらフェワ湖畔を散策。

適度に風が吹いていて気持ちよかった。

ホテルに帰着して、

明日早朝のカトマンズ行きに備える。