【閲覧注意】スポーツクライミングでは、楢崎選手がとても強い。しかし・・・【外岩クライマーの目線】

スポーツクライミングだと、楢崎選手は強いよね。イケメンだし、期待できるよね!日本では彼が最強クライマーなんだろうな。

 

こんにちは、トミーです。

外岩でのフリークライミングや、山の岩壁・氷壁でのアルパインクライミングが好きです。

そしてその練習という位置づけで、週1回ほどボルダリングジムに通っています。

 

さて、先日に、スポーツクライミング競技において、ボルダリングW杯で楢崎智亜選手が優勝されました。

非常におめでたく、今後の活躍が期待できますね。

2020年開催の東京五輪が楽しみな選手です。

それでは、日本で最強クラスのクライマーというのは、東京オリンピック候補の楢崎選手なのでしょうか?

このことについて、外岩クライマーの目線から、勝手にちょっと考察してみたいと思います。

【閲覧注意】当記事は、執筆者の主観バイアスがやや強めに入った偏った内容となっている可能性があります。もし不快に感じられたら、誠に申し訳ございません。




目次

スポーツクライミングでは、楢崎選手が強い。しかし・・・

一般の方は、たぶん楢崎選手はスポーツクライミング界のスターだという認識かと思います。

確かにそのとおりだな、と僕も思います。

 

ただ、そこそこの期間にわたりクライミングを嗜んできた者としては、たぶん一般の方とは「スポーツクライミング」に対する目線が異なっています。

競技としてのスポーツクライミングと、難易度追求の外岩クライミング

スポーツクライミングは、当然ながら競技なので、「どこまで高く登れるか」を他人と競い合うことで勝負が決まります。

そして、そのルールは、ざっくり下記のとおり。

 

競技としてのスポーツクライミングのルール

登る対象:人工壁
・登るコース:競技会で設定されたコース
・競技方法:上記コースを、選手全員が登り、その最高到達点を競い合う
・制限時間:あり
・評価方式:得点(ポイント)

 

そして、上記スポーツクライミングに照らし合わせると、難易度を追求する外岩クライミングのルールは下記のとおり。

難易度を追求する外岩クライミングのルール

・登る対象:自然の岩
・登るコース:難易度が最も高い、岩の課題(もしくは未登のプロジェクト)
・競技方法:一番最初に完登すること(トライ回数が少ないほど良しとされる)
・制限時間:なし
・評価方式:グレード(ボルダリングのグレードはVグレード、段級グレードなどがあり、リードだとデシマルグレードなどがある)

 

以上のように、競技としてのスポーツクライミングと、難易度追求の外岩クライミングとでは取り組み方が全く異なります。

なので、競技としてのスポーツクライミングに取り組む人と、外岩クライミングに取り組む人とでは、たぶん見ているものや価値観が違っています。

そして、難易度追求の外岩クライミングに取り組んでおり、この世界で非常に強いクライマーというのは、楢崎選手のほかにも多くのクライマーが存在しています。

日本人だと平山ユージさん、安間佐千さん、小山田大さん、倉上慶大さん、中嶋徹さん。
外国人だと、アダム・オンドラ、クリス・シャーマ、アレックス・オノルドなど。

競技としてのスポーツクライミングのルール

・登る対象:人工壁

外岩を登ることは現在は競技には存在せず、人工壁を登ります。人工壁は、色とりどりのプラスチック製ホールドを掴み、登ります。外岩を登ることとは、感覚がやや異なりますので、同じ難易度でも難しさの感覚が異なります。
具体的には、ホールドの質感(硬さ・摩擦の有無・重さ・痛さなど)、ホールドの探し方、ムーブの起こし方などが違います。

・登るコース:競技会で設定されたコース

競技会において、ルートセッターが設定したコースを登ります。なお、そのコースは、予選と決勝、男性と女性ごとに難易度が決められ、選手全員がある程度は登れる難易度でありながら、その順位に差が現れやすいような難易度の設定と、見た目の面白さが伝わるようなコース設定がなされるという点が独特ですね。

・競技方法:上記コースを、選手全員が登り、その最高到達点を競い合う

同じコースを、同じ場所・時間を共有しつつ、選手同士で登って最高到達点を競い合うことで勝敗を決めます。ここで必要とされる能力は「本番に強いメンタルを持つこと」だと思います。外岩と違って、本番はその場所その時間のたった1回に絞られるからです。外岩クライミングでは、本番はある意味自分のタイミングで決めることができます。この点はシビアだと思います。

・制限時間:あり

決められた制限時間内に、最高の成果を出さないといけない点では、やはりシビアな世界であると思います。

・評価方式:得点(ポイント)

競技としてのスポーツクライミングでは、その評価を行うにあたって選手のパフォーマンスに対して行うポイント制を採用しています。競技の場における評価システムとしてはこれが効率が良いからです。しかし外岩クライミングでは、その岩の課題に対して難易度が決められており、その単位(指標)は国ごとに共通認識の指標が存在します(日本だと、ボルダリングでは段級グレード、リードではデシマルグレードが一般的)。

難易度を追求する外岩クライミングのルール

・登る対象:自然の岩

あくまでも最終目標は自然の岩であり、人工壁はムーブやフィジカルのトレーニングとして位置づけられていることが多いです。
人工壁でのパフォーマンスでは、競技としてのスポーツクライミングに取り組む人には適わないかもしれません。
しかし人工壁とは質感や形状、感覚が異なる自然の岩を登るために最適化した身体づくりを常日頃から行っています。

・登るコース:難易度が最も高い、岩の課題(もしくは未登のプロジェクト)

現存している難易度が最も高いことで知られる岩の課題を、できるだけ少ないトライ回数で完登を目指します。
また、未登となっているプロジェクトの完成(初登)を目指します。プロジェクトは世界最難であれば価値は非常に高いですが、最難ではなくとも、かなりの高難度である場合も多いです。人間の可能性の限界を押し上げる努力をするわけです。

・競技方法:一番最初に完登すること(トライ回数が少ないほど良しとされる)

というか、そもそも競技ではないですが・・・。より難易度が高い課題を、より少ないトライ回数で完登すること。シンプルですね。そして通常は、これを単独で行います。いつ、どんなタイミングで行ってもかまいません。ただし、未登プロジェクトの初登については、初登は世界でたったひとり、そしてたった一度しかチャンスはありません。その意味での価値は高いです。また、競技としてのスポーツクライミングとは異なり、完登をしなければ登ったことにはならず、評価もされないのが通常です。

・制限時間:なし

いつ、どんなタイミングで登ってもいいので、制限時間も勿論ありません。当たり前ですが、観客も通常はいません。

・評価方式:グレード(ボルダリングのグレードはVグレード、段級グレードなどがあり、リードだとデシマルグレードなどがある)

ボルダリングだと、Vグレード(アメリカ)や段級グレード(日本)があります。フレンチグレードというものもあり、日本のメディアでもそれぞれのグレード表記を目にします。正直、ややこしいですね・・・。一般的には段級グレードがわかれば問題ありません。

リードだと、デシマルグレード(アメリカ・日本)が一般的で、フレンチグレードもたまに使われます。ボルダリングとリードでもグレード表記が異なっているので、さらにややこしいですね・・・。

まぁそんな感じですが、競技としてのスポーツクライミングには、こうしたグレードを目にすることは多分ありません。
なので、一般の人は、競技クライマーが登っているコースの難しさを理解しづらい状況にあるといえるでしょう。

難易度追求の外岩クライミングと、人跡未踏の冒険性&難易度追求のアルパインクライミング

以上、競技としてのスポーツクライミングと難易度追求の外岩クライミングとの比較について掘り下げてきました。

しかし、山登りからクライミングに入ってきた僕的には、クライミング界を眺めるときには、登山的な視野も含まれてきてしまいます。

難易度追求の外岩クライミングと、人跡未踏の冒険性&難易度追求のアルパインクライミング

難易度追求の外岩クライミングで培った能力を、より過酷な環境にある巨大な山や岩壁を制覇するアルパインクライミングで活かせるか否かの議論があります。

日本の冬壁や、アルプス・アラスカ・ヒマラヤの高峰を、より難しいコースで登攀(クライミング)することをアルパインクライミングといいます。このアルパインクライミングの世界においても、世界最先端のクライマーが世の中には存在しています。

彼らはクライミングを含めた山登りや巨大岩壁を登るプロフェッショナルであり、僕的に魅力を感じる存在はアルパインクライマーであるところの彼らです。

そして、最強クライマーが誰か?ということを考えたとき、アルパインクライマーとして最強なのは誰か?ということを想像します。

それぞれのジャンルが細分化・専門家されており、「最強クライマー」の比較は不可能かつ無意味

その昔、「登山」というひとつのジャンルから始まり、これが様々な形に細分化・専門化されてきました。

細分化・専門化の経緯についてはここでは省略しますが、現在の派生ジャンルはおよそ以下のとおりです。

登山から派生したジャンル

・高所登山
・沢登り
・トレイルランニング
・アルパインクライミング
・フリークライミング(スポーツクライミング)
・ボルダリング

そして、2020年東京オリンピックの種目になっているスポーツクライミングは、上記のフリークライミングとボルダリングに該当します。しかも外岩ではなく、人工壁です。

先日ボルダリングW杯で優勝した楢崎選手は、人工壁の競技ボルダリングという切り口において、世界トップの成績です。

一方で、アルパインクライミングで名を馳せているのは、佐藤裕介さんや横山勝丘さんといった方々です。

人工壁を舞台にした競技としてのボルダリングで求められる身体的精神的能力と、極限の自然環境にある巨大な山塊の制覇を狙うアルパインクライミングで求められる身体的精神的能力とでは、全く別次元で異なります。

それは、例えるならば、100m走の選手と、42.195kmのフルマラソン選手とでは、求められる身体的精神的能力が全く異なっているということと同じです。

100m走の選手と、フルマラソン選手とで、どっちがすごいかを比較することはできませんよね?
だって土俵がそもそも違いますから。

これと同じで、「最強クライマー」を語るときに、アルパインクライマーとスポーツクライマーを比較することは完全にナンセンスだという話です。

 

外岩クライマーは、スポーツクライミングに意外と興味がない?

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外岩クライマーはジムで練習して自然の岩壁で勝負をかける

常にプレイヤーとして自分自身と向き合い、平日はジムで鍛錬し、休日に外岩へ足を延ばし、本気トライをする外岩クライマーたち。その目的は、目標とする外岩のルートを完登(オンサイト、もしくはレッドポイント)することです。

そして、自然の中で身体を動かし、心身をリフレッシュすることが好きだったりもします。

向き合うのはあくまでも自分自身であり、クライミングを他人との勝ち負けととらえている人はあまり居ないように思います。よって、スポーツをしているという感覚も薄いかもしれませんね。

こうしたメンタリティの持ち主なので、スポーツクライミングにはあまり興味がないように思います。

スポーツクライミングを追求するならば、コンペ(大会)で優勝することが目的になることが自然だと思いますし、登る対象も基本的には人工壁に絞られるはずです。

しかし、こうした登り方を好む人が外岩クライマーには少ないです。そして、スポーツクライミングを観戦して楽しむこともあまりしていないような印象があります。

スポーツクライミングの選手は、人工壁の競技会に勝負をかける

スポーツクライミングの選手にとって最も価値があるのはコンペでの入賞になると思います。

なので、普段もそこを意識してトレーニングに集中しているでしょうし、その登攀対象も人工壁を登ることが大半だろうと思います。

2020年東京オリンピックで見られるのは、こうした環境や価値観で育ってきたスポーツマンクライマー達です。

しかし、こうした人工壁のコンペで強い選手は、おそらく外岩でも強いです。

スポーツクライミングの上位選手がもし外岩クライミングで本気になったら、限界グレードはさらに押し上げられるのかもしれません。

終わりに

2020年東京オリンピックで正式競技種目となったスポーツクライミング。

しかし、テレビで観られる競技としてのスポーツクライミングと、クライミング愛好家が普段取り組んでいるクライミングとでは、その価値観や精神性、難易度評価などにおいて、諸々が異なっているのだということを伝えたいと思い記事にしました。

とはいえ、ちょっと取り留めがなく、まとまりもない、ただダラダラ長いだけの記事になってしまいましたが・・・

「オリンピックのスポーツクライミングが、クライミングの全て」ではないということを、僕はきっと伝えたかったんだと思います(あたかも他人事のように・・・)

というわけで、今回は以上にしたいと思います。

 

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