結局、冬山の難易度語るときに一番ムズい山ってどこ?【アルパイン経験がある山ヤが語る】

 

こんにちは、トミーです。

冬山登山は好きで、2003年頃からやっています。

アルパインクライミングも、若干かじっています。

 

日本の冬山で、一番難しい山とか難しいルートってどこだろう?

冬山登山をやっている人は、一度はこんな疑問を持ったことがあるかもしれません。

僕も疑問を持っていました。

今回の記事では、このような疑問に対して考えてみた「答え」と、これに関連した冬山の難易度について、深堀りしてみたいと思います。



結局、冬山の難易度語るときに一番ムズい山はどこよ?

そもそも論で申し訳ないですが・・・

「一番難しい冬山」なんて、存在しません。

冬山は、常に条件が大きく変化している厳しい大自然ですので、どこに行っても死のリスクは付きまといます。

そんなことは、わかってる!

と言われてしまうかもですが、このことが大前提としてあります。

 

しかし、それでもあえて、僕が思う「一番難しい冬山」を挙げてみますと、以下のとおり。

  1. 厳冬期黒部横断
  2. 厳冬期北アルプス全山縦走
  3. 厳冬期穂高パチンコ

一番難しいといいつつ、3つも並列してしまいましたが・・・

上記はいずれも、それぞれタイプの異なる難しさがあると思われますが、共通して求められる能力としては、以下のようなものがあると思います。

  • ラッセル力、歩荷力(40kg以上の荷物を背負って、深雪を掻き分け登下降を7~10時間以上続ける)
  • ルートファインディング能力(道なき道を探り当てる力、ホワイトアウトに対応できる力)
  • 長期の冬山生活能力(最低10日間は氷点下でテント泊できる気合と能力)
  • クライミング能力(クライミングギアを、適切な場所で適切に使用できる能力)
  • 天候把握力、行動判断能力(天候を予測し、最適な行動判断ができる能力)

 

それでは、順番にみていきましょう。

 

1, 厳冬期黒部横断

「信州側から入山し、後立山連峰を越え、深く切れ落ちた黒部峡谷を渡渉し、剣岳を越えて早月尾根を経て馬場島へ下山する」といったもので、入山ポイント・経由するピークや尾根はかなり様々なバリエーションがあるようです。

しかし、基本的には世界有数の豪雪エリアにおけるノートレース登山となり、悪天候にも捕まりやすく、真冬の黒部川の激流の渡渉や、強風低温に晒される冬の剣岳ではシビアなクライミング能力も問われ、登山とクライミングの総合力を最高レベルで兼ね備えていないとクリアできない課題です。

【国内最難課題】劔沢大滝右岸トサカ尾根末端壁「ゴールデンピラー」

2016年2月に、伊藤仰二さん、佐藤裕介さん、宮城公博さんが、32日間をかけて、高難度な岩壁クライミングを交えた黒部横断を達成しています。

この記録は、ピオレドール・アジアを受賞しており、世界的な評価を受けています。
僕が知る範囲での最難の冬山登山は、この記録かなと思います。

 

2, 厳冬期北アルプス全山縦走

北海道の山岳ガイド・舟生大悟さんが2016年12月~1月にかけての27日間で「日本海の親不知~穂高連峰~上高地」までを、単独・無補給で踏破しました。国内初の記録です。

純粋な冬山登山としては、わかりやすくて誰もが認めうる完璧な記録だと思います。

クライミング要素の比重はあまりないものの、黒部横断よりも距離は遥かに長く、単独。荷物も50kg以上とのこと。
ハイプレッシャーな課題であり、エキスパートレベルの登山家でも、中々挑戦も達成もできないものと思われます。

 

3, 厳冬期穂高パチンコ

昔の冬山では最高峰とされた課題で、穂高屏風岩~前穂北尾根~前穂東壁~奥穂~滝谷と、屏風岩・滝谷では岩壁をクライミングしながら穂高連峰を縦走する課題です。

これも、岩壁登攀ではどこのルートを登るのかで色々選択肢があります。
(条件によっては、端折ったりも可能)

大キレットを越えて槍ヶ岳まで縦走し、小槍・槍ヶ岳西稜をクライミングして、北鎌尾根を下降するコースもあります。

最近はこの課題に誰かがトライしたという話は聞きませんが、今ではクラシックルートの扱いですかね。

しかし、厳冬期北アルプスの核心部に突っ込み、存分に味わいつくすという意味で非常にプレッシャーが強く、依然としてハードルの高い課題です。

冬山の難易度を、一概に決定するのは不可能な話

そもそも冬山の難易度というものは、天候・気温・積雪量などの自然条件によって、大きく変わってしまいます。

好転周期を捉えれば、快適な登山&クライミングになり、あっけないほどに思えることがあります。一方で、猛烈な吹雪に閉ざされたらどんな場所でも脱出は困難になりますし、不運にも雪崩に巻き込まれたら、どんな人間であってもイチコロです。

ベテラン登山家が、意外な場所で事故を起こしたりするのも、冬山にはこういったリスク要因が付きまとっているからです。

また、難易度を評価することそのものが、登山の本質からはかけ離れている気がします。

自分なりに想像力を膨らませ、課題を決定し、登頂したか否か、どのようなルートを登ったかにかかわらず、自分の能力を最大限度まで発揮し、困難やリスクを乗り越え、実際の登山をいかに充実したものにできたか?

このことが最も大切なことじゃないかと思えるからです。

登山は、冒険的な側面・スポーツ的な側面もありますが、他人との競争ではないですからね。拙い僕自身の山の体験からも、最近ではこのように思うのです。

 

とはいえ、上記のルートは多分国内最難クラス

冬山でも、やはり初心者向けとか上級者向けとか、ある程度の客観的指標のもと、難易度のカテゴライズはできます。
そういった情報を得て、みんな自分のレベルに合った登山ができるわけです。

その意味において、やはり上記に紹介したルートってのは、国内最難クラスなのかなとは思います。挑戦できるのは、熟練の経験値を持つエキスパートのみだと思うのです。

さらにいうと、上記の課題は、一般に知られているわりと有名な海外の山よりも難しいと思います。

例えば、モンブラン、マッターホルン、キリマンジャロ、エルブルース、デナリ(マッキンリー)よりは、少なくとも難易度(というか精神的敷居)は高いと思います。

あくまで僕自身が感じていることですが。。

 

まとめ

 

結局、冬山の難易度語るときに一番ムズい山ってどこ?

それは、下記です。

  • 厳冬期黒部横断
  • 厳冬期北アルプス全山縦走
  • 厳冬期穂高パチンコ

その中でも最高峰は、これだと思います。

劔沢大滝右岸トサカ尾根末端壁「ゴールデンピラー」

以上となります。

 

しかし、冬山に限らず、登山は難易度を競うものではありません。

難易度は楽しみのいちエッセンスに過ぎません。

冬山愛好家のみなさまは、くれぐれも事故のないよう、安全第一で登山を楽しんでいただけると幸いです。
(自戒もこめて)