八ヶ岳主峰・冬の赤岳登山における難易度について

八ヶ岳主峰・冬の赤岳登山における難易度について
冬山登山で人気があるらしい赤岳って、どれくらいの難易度なのかな?
冬山にすごく興味があるけど、まだ行ったことないし、アイゼンもピッケルも使ったことないし・・・。
遭難のイメージとかもあるし、未知の世界だからやっぱ怖さがあるかな・・・。
初めて行って登れるものなのだろうか?どれくらいの技術が必要なのだろうか?

 

そんな疑問をお持ちの方に向けて、解説してみたいと思います。

ちなみに僕は、冬の赤岳には5回ほど登頂しており、先日にも登頂してきたばかりです。

ほかにも、いろんな山で冬山登山を経験しています。




冬の赤岳登山の難易度は・・・気象条件次第で大きく変わります

の赤岳登山の難易度は・・・気象条件次第で大きく変わります

そもそも冬山は、気象によって難易度が大きく変わります

例え天気が快晴であっても、気温が低くて風が台風並みに強い場合には、前進は非常に困難となります。

僕は過去に、文三郎尾根を登り切った分岐のところで、風があまりにも強すぎて前進できずに引き返したこともあります。

また、積雪量が多く天気も悪いときには、中岳沢などで雪崩に巻き込まれるリスクもあります。

こうした冬山特有のリスクが存在しており、どの辺りではどういったリスクが内在しているのか?
リスクを回避するためにはどのような対策を取るべきか?といったことを常に念頭に置きつつ、現地で行動判断を下すことが必要になります。

こういったことは、冬山未経験の方にはなかなか難しいことです。

技術的には、基本的な歩行技術と人並みの体力があれば登頂できます

上記の気象条件リスクが常についてまわるのが冬山の性質なので、これを完全に無視することは決してできません。

しかし、自分自身の体力・技術面のみに着目した場合、冬の赤岳登山はどのくらいの難易度になるのか?

それは、ざっくりいうと「基本的な歩行技術と人並みの体力」があれば登頂できます。

人並みの体力、というのは自分で言っておきながら定義があいまいですねw

夏の赤岳を問題なく登れる体力、というイメージです。

まぁ、訓練が必要な登攀技術は別に何も必要はなく、普通に歩いていたら登頂できる山、ということになります。

※ここでいう赤岳登山は、一般ルート(文三郎尾根、または地蔵尾根)からの登頂を指しています。バリエーションルートからの登頂ではありません。

冬の赤岳は、冬山初心者が初めて行って登れるのか?

冬の赤岳は、冬山初心者が初めて行って登れるのか?

【結論】熟練の冬山経験者と同行したら、登頂可能です

上記に解説したとおり、普通に歩いていたら登頂できる山ですので、冬山初心者が初めて行っても登頂できると思います。

ただし、何度でも言いますが、気象条件リスクが付きまとう性質上、これらからリスク回避のための行動判断を行う必要があるため、熟練の冬山経験者と同行することは必須となります。

くれぐれも単独登山はやめましょう。

熟練の冬山経験者とは?

熟練の冬山経験者と同行したら、登頂可能です

以下のような方々です。

  • 冬山に精通している経験者
  • 山岳ガイド

冬山に精通している経験者と一緒に冬の赤岳に登頂する

知人の伝をたどって友達になって一緒に行ったり、あるいは山岳会に入会して冬山のベテラン会員と仲良くなって連れていってもらったり、といったことはメジャーな方法です。

しかし、プロではなくアマチュアなわけですから、経験者といってもどの程度のレベルなのかは完全にその人によりけりなので、信頼できる技術を持ち合わせているかどうかは未知数であることが多いでしょう。

冬の赤岳に登りたいなら、過去に冬の赤岳に自信を持って登頂したことがある人を選ぶべし。

山岳ガイドを雇って冬の赤岳に登頂する

冬山経験者の知人友人が周りにいない場合は、山岳ガイドを雇うのが良いでしょう。

山岳ガイドは世の中にたくさん存在しており、ネットで検索すれば多くの情報がヒットします。技術がしっかりしていて人柄も良い優良な山岳ガイドを雇うことはお勧めの選択肢です。

お金はかかりますが、安全を担保できるので安心して冬の赤岳に挑戦できます。
僕も初めて冬の赤岳に登頂したときは、山岳ガイドを雇いました。

ルートは具体的にはどんな感じなのか?

いくつかのルートがありますが、ルートの雰囲気は基本的には概ね以下の感じです。

  • 赤岳鉱泉・行者小屋までは、木道がところどころにある、樹林帯の緩やかな踏み固められた雪の登山道(標高差約7~800m)
  • 赤岳鉱泉・行者小屋から赤岳頂上までは、最大40度程度の急斜面で、踏み固められた雪の登山道と、ときどき手で鎖を使うような岩稜帯(標高差約5~600m)

※冬富士のようなカチカチに凍ったアイスバーンの危険な斜面は、基本的にありません
※攀じ登る系のクライミングは、ありません
※基本、二本足で歩くだけです

先日、冬の赤岳の難易度を改めて体感してきた僕の場合

雪が少なく天気もよく気温高く、容易に感じた

雪が少なく天気もよく気温高く、容易に感じた

この日は一日中、快晴・微風でして、稜線の気温もマイナス約3℃前後。終始穏やかでした。

マイナス3℃というと寒そうに思えるかもですが、この数日前に関東平野でも埼玉県内でマイナス3℃とかでしたし、登山で身体を絶え間なく動かしていると、冬山用ウェアのレイヤリングではかなり暑く感じられるくらいです。

そして雪は例年に比べてとても少なく、稜線付近ではほぼ夏道が露出しているような状況でした。

つまり、雪山の技術はほとんど使わなくても登れてしまう条件でした。

しかし、例年の平均的な条件の冬の赤岳であれば、気温はマイナス10~15℃ほど。そして稜線に出てからは風も強いので、体感温度はマイナス20℃くらいにはなることがザラです。

雪の量もあるので、滑落や雪崩のリスクもあり、基礎的なアイゼン歩行技術は必須です。

靴擦れがひどくて辛かった

靴擦れがひどくて辛かった

 

久しぶりに、冬用登山靴を履いて長時間にわたる登山を行った結果、ひどい靴擦れを起こしてしまいました。

わりと序盤で両足の踵が当たり始めていたので、ほぼ全行程にわたって一歩一歩が痛く、歩み出すたびになるべく痛まないように足の置き方に神経を払うことになり、かなりの苦痛を味わうことになりました。

そういえば、以前の冬山登山では、靴擦れ防止対策で「キズパワーパッド」を事前に踵に貼っていたことを思い出しました。
しかし今回の登山では、あまりにも久々だったので、靴擦れのことなど完全に忘却していたわけです。

また、登山靴の内部の踵付近の生地が裂けており、中の芯材が剥き出し状態になっており、これが当たっていたことが直接的な原因でした。

【核心】北沢登山道がスケートリンクのように凍結していた【赤岳登るより難しく危険】

なお、今回の冬の赤岳登山の全行程のなかで、最も辛くストレスに感じた核心部は、赤岳そのものの急登ではなく、アプローチともいえる北沢登山道(赤岳鉱泉~美濃戸)で路面が凍結していた部分でした。特に、体力を消耗している下山時に、アイゼンを履いていない状態でこの凍結箇所を歩くのは非常に神経を使い、難儀しました・・・(しかも靴擦れの痛みも酷くなっている状況でw)

素直にアイゼンを履いて歩いていたほうが正解だったかもしれません。

スケートリンク並に凍結した箇所では、相当に注意を払っていたにもかかわらず、2回ほどダイナミックに転倒してしまいました。

背中に重い荷物を背負っているので(テント泊だったので荷物が大きかったのです・・・)、下手に転ぶと怪我をしてしまう恐れがあります。

積雪量が多いほうが、こうした凍結路面は少ないのですが、雪が異常に少ないと今回のようにアプローチ道が凍結して歩きにくくなっている場合があります。

ちなみにこうした路面では、チェーンスパイクが有効です。

チェーンスパイクを履いた一行とすれ違いましたが、凍った路面を談笑しながら難なく歩行されておりましたので。

まとめ

冬の赤岳登山

八ヶ岳主峰・冬の赤岳登山における難易度についてまとめると、以下のとおりです。

  • 気象条件(積雪量・天候・気温・風の強さ)によって難易度が大きく変わる
  • 身体の技術的には、基本的な歩行技術と人並みの体力があれば登頂できます(一般ルートの場合)
  • 初心者は熟練の冬山経験者(≒山岳ガイド)との同行が必須(初心者の単独登山は禁物)

要点は上記となり、今回は僕が先日行ってきた冬の赤岳登山の体験を交えて書きました。

僕が行ったときは例年に比べ諸々の条件に恵まれ、易しかったですが、これが当たり前ではないということを肝に銘じて、今後も冬山登山を続けたいと思います。

それではみなさん、ごきげんよう^^