こんにちは、トミーです。
クライミング歴は、10年くらい。
ジムから外岩まで、浅く広く登ってきました。
さて、クライミング用語の「オンサイト」。
クライミングをやったことがない方、クライミングにまだ慣れていない方は、聞き慣れないワードだと思います。
一言でいうと、「オンサイト=”一撃”」
対象のルートを、初回の挑戦で完登することをいいます。
以下、深堀りしてゆきます。
目次
クライミング用語の「オンサイト」とは?【究極最高のスタイル】
オンサイト= “一撃”で完登
オンサイトとは、「登りたいルートを、自分の肉体だけのチカラで、初回の挑戦で完登すること」という意味になります。
クライミングのスタイルとしては、もっともカッコよく、自然な形とされています。
なお、以下のような場合は、オンサイトとは呼びません。
- 自分より先に登っているクライマーの動きを、事前に見ており、その後に初回の挑戦で完登すること
- 初回の挑戦でルートを最後まで登りきったが、実は途中でクイックドローを掴んだり、ボルトを踏んだりしている
- 初回の挑戦でルートを最後まで登りきったが、実は途中でテンションをかけて休んだり、落下したりしている
1の場合、これを通常は「フラッシュ」と言います。「オンサイト」の次に評価されるスタイルです。
2と3の場合は、そのルートをとりあえず最後までは登りきっただけ。
登る途中で、いろいろ支点や残置物を使ったり、途中で落ちてロープとかにぶらさがったりしたら、当たり前ですがそれはオンサイトにはなりません。
また、オンサイトというのは、その挑戦者(クライマー)にとって、限界グレードへの挑戦という意味合いも多分に含まれます。挑戦者にとって、対象のルートのレベルが易しすぎたら、「それはまぁ、登れて当然だよね・・・」ってなるからです。
究極に最高なスタイル「オンサイト」。その美学とは
クライミングというのは非常にシンプルで、「できるだけ難しい壁を、ただスマートに登りたい」ということに尽きると思うのです。
やっぱり、難しい壁をサクッと登れたら、それは純粋に気持ちが良いものだし、周囲に凄いな!と思わせる魅力が生まれるわけです。
とはいえ、クライミングには常に死のリスクが隣り合わせです。
いつ墜落するかわからないような危険な壁に取り付いていて、一瞬の油断やミスが起きるとその場で人生が終了します。
クライミングでは、あまりにもあっけなく、生命が絶たれてしまう。登っている限り、ある意味ではいつでもそういう極限の状況なわけです。
そんな中で、自分の能力の限界を追い求めていたら、命はいくつあっても足りません。
アルパインクライミングでは、特にそのようなリスクが跳ね上がります。
ただ、スポーツクライミング(フリークライミング)では、オンサイトトライにおいて、自然要因やプロテクションのリスクは最小限に軽減されますし、近年はアルパインクライミングでもオンサイトという用語が使われることが増えましたが、「オンサイト」は基本的にスポーツクライミングの概念です。
スポーツクライミングにおいて、「オンサイトを狙う」という美学は、追求すると強いクライマーになれる気がします。
オンサイトというのは、対象のルートに挑戦するにあたって、人生においてたった一回しかチャンスがないのです。
登って経験を積んでゆくうちに、少しずつクライミングのイロハがわかりはじめ、いずれは自分なりの目標のルートというのが生まれてきたりします。
自分は、憧れのあのルートが登りたい
そう思えたとき、その憧れのルートは最良のスタイルつまり「オンサイト」を狙うと、それは素晴らしいクライミングライフの幕開けとなります。
そして憧れのルートをオンサイトできたときの充実感は、他の誰からも理解は得られないだろうけれど、でも人生においてきっと最高のものを得られることでしょう。
ボルダリングでは、通常「オンサイト」とは呼ばず「一撃」と言う
あくまでも僕のまわりでの話ですが・・・
オンサイトという言葉は、通常リードクライミングにおいて使用されます。
ボルダリングの場合は、オンサイトではなく一撃という言い方をよく使います。
しかし一撃という言い方は、リードクライミングにおいてもオンサイトと同義でしばしば使います。
何故なのかは、正直よくわかりません。
しかし、こうした呼び方は、厳密ではないのかもしれません。
クライミングにおけるオンサイトの難しさ
僕のオンサイト最高グレードは、5.11bです
誰も興味はないかと思いますが・・・僕のオンサイト最高グレードは、5.11bです。
そして、レッドポイントの最高グレードは、5.12bです。
およそ数字で1グレードの差があります。
つまり僕の場合は、5.12bのルートについては、何回も何回も執念深くリハーサルを重ねた結果、やっと登れるグレードです。
そして、初回のトライで完登できる限界のグレードが5.11bです。
実力を測るという意味では、オンサイトに反映されます。
なぜなら、何度も練習してやっと登れるグレードは、その瞬間に出し切れる自分の本当の意味での実力とはいえないからです。
なので、僕の実力は、最も調子がよいときで5.11bだということになります。
オンサイトは、めちゃくちゃ難しい話
オンサイトに最上の価値が置かれるのは、めちゃくちゃ難しいからです。
自分が登ったこともなく、そのルートの情報を全く持っていない状況で、下記の能力を試されます。
- そのルートを完登するための最適解を、登る前のオブザベーションのみで予想・把握をし、ムーブの戦略を立てる力
- 実際のトライをスタートしたら、全くミスすることなく最適解のムーブをこなすための精神力(本番で実力を発揮するメンタル)
- これらを、自分が持ちうる身体能力の限界近くまで引き出せる力
オブザベーションで、ホールドの位置関係やムーブの組み立て方を見誤れば、想定外の誤ったムーブを強いられて、行きつ戻りつを繰り返すうちにスタミナ切れを起こしてしまいます。
通常は、ほとんどのクライマーが、こうした状況に陥ります。
なぜなら、登ったことのないルートの登り方を、頭の中で想像しただけでそのとおりに登れるクライマーなんてほとんど存在しないからです。
しかし、その想像と現実の誤差が少ない人ほど、無駄のない登り方ができるわけなので、オンサイト力も高いというわけです。
こうした能力を磨くには、想像を絶する登攀量を経験しなければ難しいでしょう。
もしかしたら、天性のセンスなども関係しているのかもしれませんが。
いずれにしても、このようにオンサイトというのは大変難しいうえ、一度でも失敗したらもう二度とそのルートでのオンサイトのチャンスは訪れないという意味において、クライミングにおいて圧倒的な希少価値を生みます。
それが、高難度だったり、未踏のルートだったりすると、尚更ですね。
まとめ
繰り返しになりますが、オンサイトとは、「登りたいルートを、自分の肉体だけのチカラで、初回の挑戦で完登すること」という意味になります。
そして、そのことが、いかに難しくて奥が深いのかということを、クライミングに熱中するほどに痛感するようになります。
それゆえに、「オンサイト」はちょっと・・・みたいな感じで萎えたりするような場面もよく出てきます。
しかし、決して簡単ではないからこそ、常に「オンサイトを狙う」ということを頭の中に置き、クライミングにトライしてみると、より一層充実した取り組みが実現できるのもしれませんね。
僕も頑張りたいと思います。
おわり。